大学院で国際保健について研究しています。

マライタ島での食生活、そしてレシピ本を作ることにした理由


先週ようやく、レシピ本のサンプルが出来上がりました。
出来映えは自分が想像していたよりもとても良かったのでとても嬉しかったです。

しかしやはり変更したい部分がたくさん出来てしまい
すぐには最終オーダーお願いする事が出来ず、

もう一度最終サンプルを作ってもらうようにお願いしました。


その最終サンプルが昨日完成しました。

内容は改善されていたし、以前にも増して良い出来映えでした。
それでも言い出すと変更してもらいたい部分は、色々出て来てしまうのですが、

予算の都合上どうしても今月内に完成をしなくてはいけないので、
最終オーダーをすることにしました。

とりあえず本の作成も一段落つきました。






今回のブログは、
私がレシピ本作成するための大きなきっかけとなった、
マライタ島マルーでの食について書こうと思っています。







ソロモン諸島では住んでいる地域によってかなり食事の内容に違いがあります。

私の住んでいる首都ホニアラ以外の地域では手に入る食料・調味料が限られているし、
電気が無い所も多いので冷蔵庫が無いと
さらに料理できるものも限られます。




私が以前住んでいたマライタ島マルー。



こちらが住居でした。




電気は夜間のみ使えましたがかなり不安定、水道とガスはありました。


こんなものを食べていました。

1ドルのドーナツは毎朝の楽しみで、


バナナケーキ作ったり、

蒸しパン作ったり、


茄子炒めたり。



家に冷蔵庫が無かったので野菜や果物は基本的になるべくその日のうちに消費していました。
大切に食べていたバナナがネズミに食べられていてとてもショックだったこともありました。
肉は売られていなく、魚もあまりマーケットに出回らなかったので食べませんでした。

タンパク源は主に卵かツナ缶でした。



野菜が売られるマーケットは週に3度だったのですが、5am~7amの早朝に開かれるので、
寝過ごした日には食料が手に入らない事も時々ありました。


早朝マーケット。暗闇なので懐中電気を持参して行きました。


ある寝過ごした日、
たまたまその日はお店に米もインスタントヌードルもビスケットも売り切れていて、
食べる物が無く、
とってもひもじい思いをしたことがあります。

まだ赴任した直後だったので知り合いも居なく頼る事もできませんでした。

ピジン語もあまり話せませんでした。

机の上の揺れるロウソクが追い打ちをかけるようにその悲しい思いを助長しました。






そんな時、同僚が家にふかしたさつまいもを持って来てくれたのです。


そのさつまいもがとっても美味しくて、感動しました。
涙を流しながら食べた思い出があります。



それまでイモ類はそんなに好きじゃなかったのですが、
初めてイモの美味しさに気づいた日でした。


野菜もすぐ腐るし手に入る種類も限られてる。

野菜炒めも飽きた。

少ない材料で作れるレシピも考えつかない。

インターネット使えないしクックパッドも頼れない。


だんだん料理をするのもめんどくさく感じて来て、
毎日のように食べていたのは、インスタントヌードルでした。
マルーでは1種類しかヌードルが手に入らなかったのですが、

少し大きな街にはいくつかの種類のヌードルが手に入るので(と言っても、3種類くらい)
足を延ばした際はそれらをたくさん購入し、毎日楽しみに食べていました。


あまりにお腹が空いて一食に2袋のヌードルを食べた日もありました。
さすがにインスタントヌードルを1週間続けると、お腹をこわしました・・。。





今は首都ホニアラで生活していますが、
それでも今の仕事で患者さんとお話しするときには私がマルーで過ごして来た経験はとても役立っています。


それはマルーでの生活の方がもっともっと現地の方々と親密な関係になれたし、一緒に生活できていたからだと思います。

残念ながらホニアラではその関係はとても薄いです。





現在レシピ本を製作していますが、
マルーでの経験が本を作りたいと思ったきっかけにもなりました。


日本でよく言われている

毎日○品以上の食品を摂りましょう
野菜を350g以上食べましょう
主食・主菜・副菜バランス良く食べましょう




口で言うのは簡単です。
しかし、ここでは無理です。
食材が手に入りません。



日本では当たり前に言われている事が、
それは贅沢な栄養指導だということを気づきました。
ソロモンに合った栄養指導の方法が必要だと思いました。

ここで日本と同じような栄養指導をしても全く意味がありません。


あの時何だったら手に入っただろうか?
何だったら作れただろうか?
どんな栄養指導をしたら彼らが実現可能だろうか?


そんなことを考え、レシピ本として形にしたいと思うようになりました。

とにかく彼らが手に入れられる材料で、というのを重要視してきました。




その理由はレシピ本を読み、

「あぁこの材料は無いから作れないや・・・」と残念な思いをしてもらいたくなかったのです。


そのため全てのレシピはとてもシンプルな材料です。
あともう一品入れたら確実に美味しくなるとわかっていても、手に入らないなら意味がない。
多少味が落ちてもしょうがない。



そして、調理器具も手に入る物で。
皆さん量りや計量カップを持っていないので、本にはマグカップで記載する事にしました。
マグカップなんてそれぞれ大きさが違うだろって思われるかもしれません。

確かにパーフェクトには計量できないかもしれない。
でも「100g」と記載することが原因で、作る事が出来ないと諦めちゃうよりは
「1mug」と記載した方がまだ実現可能だって思ってもらえるんじゃないかと思いました。



そして多少の誤差はソロモン人が持っている柔軟さにかけることにしました。
料理教室をしていて思うのは、彼らが元々持っている料理の勘や感覚が長けている事。

失敗を糧にして自分達なりの方法を考えたり、
自分達で味を調整したりするのがとても上手なのです。



そんなパーフェクトじゃないレシピ本、
世界中どこを見てもないとは思います。

でもそれが私の作りたかったレシピ本なのです。






無い状況の中でも小さな食べる喜びや作る楽しみが見つけられたら、
それはきっととても幸せなことだろうなぁと。

それがさらに健康にも良い影響を与える事ができたら尚更すばらしいなぁと。

それが、私の思いです。